ドラマコラム 『さよなら、小津先生』

 田村正和さんは独特の存在です。ニーチェを思い出します。不良債権の処理のエキスパートである小津は仲間の裏切りによって職をうしなってしまいます。しくしくとなくシーンがなんともいえません。ぼくはなんどもなんども泣きました。上司に向かって
「死にもの狂いでやるてことをここでおそわっただろ!なあ!」
という台詞がこころにのこっています。そして小津は政治・経済の教師になることになります。とある学校に赴任することになります。教師はそれぞれに問題をかかえています。
・mustとhave toの違いがわからないなおかつ教え子に手を出す過去をかかえている英語教師。
・バスケットボールの顧問を経験しているのに、生徒にナイフでさされ、生徒を信頼することが出来ない数学教師。
・校長先生の娘で授業になると腹がいたくなる国語教師。
・竹刀を手放すことができない体育教師。
・教え子に恋をしてしてしまう美術教師。
 小津先生は高校時代にバスケット・ボールをやっていました。しかし、大学にはいると経済学の勉強のためにバスケット・ボールをやることを断念します。
「コートに忘れ物をした」
と小津先生は語ります。
 そのために、男子のバスケット・ボールの顧問をひきうけることになります。バスケット・ボールをやった経験と経済学を学んだ経験を生かして、弱小チームを勝たせす事にせいこうします。
「いいか、選手の性格を的確に判断し、どのポジションをまかせるかそれが重要だ!経済学の基本原理だ」

 おもしろいシーンは英語教師の部屋に居候するときに英語教師が「規則」をさだめるんですが、小津先生はその「規則」を守っているにも関わらず、自己の思い通りに行動してしまうのです。うーん、不思議ですね。
 
 ここで、アリストテレスの『政治学』および、アダム・スミスの思想がこのドラマの解釈にやくだつのではないかとおもいます。
教育を考える上ではジョン・ロックの『教育論』、およびカントの『人間学』を善くよむことで「教育とはなにか」についてかんがえることができるのではないでしょうか。

 そして、キルケゴールの思想のなかで、ソクラテスを教師として考えた本があります。これはすさまじく読みにくい本ですで鬱になりやすい本ですが、読む価値はあります。

 また、ニーチェの『道徳の系譜』木場深定著、岩波文庫と『ニーチェ伝』を読むと、田村正和さんの存在感がおぼろげながらわかるような予感がします。